ワクチンの技術

せっかくの機会なのでCOVID-19を題材にワクチンの技術についてまとめ。

治療薬ではないのでご注意を。

+αでコロナのワクチン関連の情報もみつけたのでまとめる。

※トキソイドワクチンとか細菌に対するワクチンは割愛。

※筆者は専門家ではありません。あくまで下記のサイトから集めた情報を和訳・まとめているだけですので、間違っていることもあるかもしれませんのでご注意ください。また訂正するべき点があればその際はお知らせください。

 

〇参考にしたのはこれらのサイト。

www.nature.com

 

4月28日のNatureの記事。ワクチンについて技術の原理・開発状況もまとめてあり非常にわかりやすい。

 

https://www.who.int/blueprint/priority-diseases/key-action/novel-coronavirus-landscape-ncov.pdf

4月20日のWHOの資料。どの会社・団体がどの技術で開発していて、フェーズ情報も載っている。

 

milkeninstitute.org

アメリカのシンクタンク、ミルケンインスティテュートによるワクチン・治療薬の開発状況のデータ。非常にわかりやすいビジュアライゼーションでとてもわかりやすい。EDT4月30日9時時点では182の治療と99のワクチンが検討・開発中とのこと。

 

25,000分の1という数字が新薬開発の成功率の一つとして語られていて、もちろんこれは基礎研究からなので、必ずしも上記のデータに掛け算できるとは思わないが、どれくらいが成功するのだろうか、、、

 

 

〇ワクチン技術の種類

A graph that shows the number of coronavirus vaccines in development.

上記のNatureの記事からの引用です。大きくは4種類。①ウィルスベース②ベクターベース③核酸ベース④タンパク質ベース。

 

①ウィルスベース

生ワクチンとか不活化ワクチンとよばれるやつですね。ウィルスそのもの、あるいは弱毒化したものを投与するもの。よく予防接種で受けるものはほとんどがこれ。

 

ベクターベース

ウィルスベクターを介して、免疫反応に必要な抗原遺伝子を投与する方法。ベクター弱毒性なので生ワクチンや不活化ワクチンよりも安全と言われている。最近開発されたエボラワクチンがこれ。最初のエボラワクチンはメルクが開発してたんですね。

遺伝子治療でも使うようなアデノベクター(上のウィルスベクターとは違って自己増殖しない)を介する方法もある。J&Jはこの手法で開発中。

 

en.wikipedia.org

 

核酸ベース

DNAやRNAといった遺伝子そのものをプラスミドなどの核酸ベクターに乗せて投与する方法。まだこれで開発されたワクチンはない。

COVID-19のDNAでいうとアメリカのINOVIOがPh1を開始している。

www.clinicaltrialsarena.com

またRNAベースではModernaがPh2を開始予定。

www.marketwatch.com

 

日本発でいうと大阪大学アンジェスタカラバイオがプレクリフェーズとのことです(DNA)。

 

④タンパク質ベース

サブユニットベースのものとウィルス様分子の2パターンがある。

サブユニットというのはタンパク質の4次構造(というものがある)を構成するポリペプチド鎖のこと。インフルエンザを例にとると、インフルエンザウィルスにはヘマグルチニンという突起のようなタンパク質があって細胞に感染する際の重要な機能を持っている。なのでウィルスをダイレクトに叩かなくても、このサブユニットの働きを防ぐような免疫反応を引き起こすワクチンをつくればよいというのが、その考え方のようです。安全性は高いもののアジュバントが必要。最近だと帯状疱疹のものが有名みたい。

(参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsv1958/23/2/23_2_119/_pdf/-char/ja

 

 

ウィルス様分子はその名の通りでウィルスから毒性のもととなるRNAやDNAを抜いたような分子を人工的につくり、それを投与するというもの。考え方とは上記のサブユニットと似ているかも。

 

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これらのうちいくつまでがローンチまでたどり着けるかというのも問題だけど、ローンチされた後、どのように安定供給して、(複数ローンチされた場合)どの種類のワクチンを、どの層に優先的に分配していくか、というのも論点になる予感がしています。

治療薬は重症度×(臨床試験の時に確認した)効きやすい集団で切って、ワクチンであればリスク度×サブ集団の属性っていうかんじでしょうか?

そうすると会社的には、老人とかでめちゃくちゃ効果がでるようなワクチンか、誰にでも一定効果がでるようなワクチンのどっちかをつくれると、うれしいのかも。