バイリンガル教育は1日にしてならず

さっそく、新年一冊目の本として、

「言葉と教育 海外で子どもを育てている保護者のみなさまへ」を読了しました。

思った以上に海外での子供の教育に示唆のある本だと思ったので、メモ。

 

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筆者はトロントの日本人補習校で校長を務めており、またトロント大学でも研究を行っていた方。理論的な説明が平易な言葉でされているのもよいし、日本人補習校でのデータや事例も詰め込まれており、説得力がとてもあった。初版は1998年で中身は変わってないので、少し古いデータともいえるが、汎用性は高く今でも使えそう。何よりこの価格でこの内容はコスパ高い!

 

〇参考になった点

バイリンガルの場合でも母語教育が重要になるという事。2言語が並行的に育っていくというより、片方がまず強くなり、その後もう1言語が強くなるという課程をたどる

・2つの閾値論:

1つ目→まず最低限の論理的な読解力・スピーキング力が片方の言語で超える状態

2つ目→両方の言語で上記の能力が達成される段階

・発達論と言語教育

子どもの発達過程を年齢・周囲環境から6つにステージに切り分けたとき、それぞれで異なる介入が必要ということ。特に両親が日本人の場合には、5-6歳までは日本語メイン、7歳から12歳までは英語の影響が強くなってくるので、家の外は英語、家の中は日本語と区切りをつける。12歳以降は、それまでと同様だが、おそらく主言語をのばしつつもう1言語を継続して習えるような環境づくりをする

・長期的な視座で教育すること

やはり1言語で教育されている子供とくらべて、バイリンガルの場合、高校生ぐらいになるまで、両方の言語もしくは片方の言語は平均値かそれ以下になる傾向にあるようです。その結果をいちいち気にするより、継続的に母語と触れ合える環境をつくること、楽しく現地校に通える環境をつくること、が大切。親の役割は母語の教師でも英語の教師でもなく、一緒に学ぶパートナーであり環境を用意してあげること。

 

〇こういう点もあるとよかった・・・という点

・両親のタイプによっても教育の方法は多少違うのかなと。両親が日本人の場合と片親だけの場合でできることも変わってくるので、その辺りまで踏み込んでいてくれているとよかった。明言はされていないが、この本では両親が日本人のケースだと思われる(自分の場合はそれでもいいのだけれど)。

・同様に、海外在住の目的別の示唆もあってもよかったかもしれない(少し触れられているが)。数年程度の駐在家族、長期滞在予定の家族では、そもそものゴール自体が異なるため、教育方針も変わってくるのかなとも感じた。

・本書とは関係ないが、海外在住の子女を対象とした同様の研究は継続してやっていてよいのではないかと思った。せっかく「海外子女教育振興財団」が発行しているのだから最新のデータをもとに本書もアップデートしているのが理想なのでは。