アメリカのライフサイエンスクラスター(地理的な集積地)

アメリカに来て驚いたのは、もちろんカリフォルニアやボストンのような有名なクラスター以外にも様々な都市でクラスターが形成されているところです。

 

東京一極集中の日本と違って大企業のHQも各都市に分散されており、技術シード・人材を生み出すアカデミア面でも有力な大学が分散されていることで、まさに東西南北にいろいろなクラスターが生み出されているので、ライフサイエンスを中心にご紹介。

 

まずはこちらのランキングからトップ5をご紹介

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ソース:CBRE 2019

www.cbre.us

2020年版もすでに出ていますが、顔ぶれ自体はほぼ変わりないのでこのままご紹介。

ランキングは主に雇用面(業界の雇用増加率や研究者数)のデータをベースにしてますが、NIH研究費や地域の教育機関など研究面のデータも反映しているようです。

 

〇全体的な傾向

全体的に、医学・生命科学に強い名門大学が集積していると、これらの大学の病院部門もあるので、自然とライフサイエンス・病院関連の投資・人材が集まりやすい傾向にあるようです。

 

VC投資金額では、1位・2位のボストン・ベイエリアが別格でクオーターごとの金額で常に$6M、3位~5位は$0.2-1Mというところでしょうか。この辺の金額って日本と比べるとどうなんでしょうね?

 

一方で、これらの伝統的な地域では人材獲得競争・インフラへの投資競争などで初期投資コストが上がりやすい傾向にあるので(資金が集まりやすいという利点はもちろんあるのですが)、日本であまりなじみがない地域で、活発にスタートアップが立ち上がったり、支援するVCなどがオフィスを構える傾向にあるようです(レポート外の私見も混ざっています)。

 

1位:ボストン・ケンブリッジ

 いわずともしれたライフサイエンスの伝統的なメッカ。バイオテックがメインな気がします。

教育面でいうと、いわずとしれたハーバード・MIT・ボストン大学・タフツ大学ですね。MGHやBYWHみたいな関連の病院も規模が大きいです。

 

企業だと、サノフィジェンザイム、Vertex、バイオジェンなどのHQがあります。そういえば最近タケダもシカゴからボストンに移動しているみたいですね。もともとオンコロジーはボストンにありましたが(昔に買収したM社の拠点なので)、買収したシャイアーレキシントン(ボストン郊外)なので、単にそれが理由だと思いますが。

他にも本社機能は別都市でもR&Dはボストンにあったりします。ファイザーとかMSDとかリジェネロンとか(たぶん)。

医療機器だとJJのDepuy Synthes(整形外科系)が郊外にありますね。

 

2位:ベイエリア

これまたメッカ。スタンフォード・UCバークレー・USFといった医学の名門校がそろっています。 バイオテック・デジタルヘルスが強い気がします。

 

製薬でいうとジェネンテックやギリアド、機器でいうとダヴィンチを開発したIntuitiveとか。デジタルヘルスでいうとOmada Health・Fit Bit・Grail・23andMeなどでしょうか(後者2つは他の領域にも分類できそうですが)。アップルやGoogleのようなヘルスケア分野に食指を伸ばしているテックジャイアントも多いですしね。

 

3位:サンディエゴ

もはやメキシコ近くのサンディエゴ。大学はUC San Diegoが有名ですが、おそらく特徴は研究機関の多さ。Scripps Research InstituteやSalk Institute、Sanford Burnham Preby Instituteなどの有名な研究機関があり、シーズがあるのだと思います。クオーターごとのVC fundの投資金額も常に0.5-1 Mはあるようで、注目度の高さを伺えます。 

企業でいうとイルミナやデクスコム・タンデムなどでしょうか。ファイザーのR&D拠点もありますね。

 

4位:ニュージャージー

ニューヨークから少し離れたニュージャージー。なぜか出身の同級生はニュージャージーを卑下する傾向にありますが、ライフサイエンスは伝統的に強い地域です。

教育面ではラトガー大学やプリンストン大学といった名門校があり、企業面で見てもMerckやBMSやJJのJanssenやBayerなどビッグネームには事欠きません。一方でスタートアップという意味では他と比べるとややさみしいか。

 

5位:ローリー・ダーラム

 南部のライフサイエンスクラスターであるRTPエリア。ローリーではなくラレィみたいなほうが発音的には正しいですね。

教育面ではノースカロライナ大学(UNC)・デューク・ノースカロライナ州立大学(NCSU)など医学・生命科学・農業に強い大学が集積してます。

企業面でもGSKのアメリカのHQやライフサイエンス系のコンサル・CROであるIQVIAやSyneos HealthのHQ、アメリカ最大の検査会社であるLab Corp、農薬メジャーのシンジェンタやBASFやBayerの農業部門が拠点を置いています。

 

番外編

ナッシュビル

デジタルヘルスは最近ではナッシュビルが有名になっています。詳細は下記記事参照。

healthcarecouncil.com