アメリカの独特のヘルスケアプレーヤーとしてPBM(Pharmacy Benefit Manager)という組織・業界があります。
この記事でも少し紹介した通り、AmazonがPharmacy事業を超えて狙っているのではないかとも噂される業界です。
この辺りのプレーヤー間のつながりがわかりにくかったので、自分の頭の整理がてら、①どういう風にモノ(主に薬)とカネが流れているのか?
②PBMの役割
について整理してみました。
①PBMのまわりのモノとカネの流れ
アメリカはそもそも院内処方という制度がなく(医薬分業)、処方薬というとCVSやWalgreenなどの薬局にいって購入する必要があります(上図の左)。
もちろん入院を要するような治療に使われる薬(抗がん剤等)は薬局ではなく直接医療機関を通して患者に届きます(上図の左)。
PBMが働くのはこの処方薬のパターンです。下図で価格との関連も整理してみました。数字は上図の数字と一致している(はず)。
②PBMの役割
主に次の5つの役割になるかと思います。
・フォーミュラリーによる薬のアクセスの効率化
・フォーミュラリーを根拠とした製造業者との交渉・リベートの引き出し
・保険会社ー製造業者間の償還価格・カバレッジ交渉の代行
・薬局に代わるGPOとしての保険会社との償還価格との交渉
・薬局ー保険会社間のClaim処理の代行
スケールエコノミーを活かした保険会社・製造業者との交渉力の強化というよくあるGPO機能だけではなく、フォーミュラリーを活用したEvidence Appraisalによる科学的なアプローチからのリソース効率化の機能を持っています。
フォーミュラリーというのは日本でも一時期話題になりましたが、処方薬として償還の対象となる薬のリストのことです。ただ日本で語られてしまった病院レベル・・・ではなく薬局チェーンレベル(全国・地域)での大規模なものです。
フォーミュラリーにはRCTなどの臨床エビデンスだけでなく医療経済性なども加味され、また毎年のようにRWEなどに基づいてアップデートされます。必ずどの薬がフォーミュラリーに載った・外されたというのはニュースになるくらいです。
個人的には日本でやっていた数個の関連病院しかもたない大学病院レベルのフォーミュラリーは、米国のフォーミュラリーに比べると内容としても限定的になるか、あるいはアドミンコストのほうが掛かってしまうのではないかと思っており、やはり一定の地域レベルでの作成というのがキモになる気がします。