複雑怪奇なアメリカのCoding(保険請求コード)とPayment

この記事でも紹介したように、アメリカで医療機器の保険償還を狙うなら避けられないのがこのCodingとPaymentというコンセプト。

whatishealth.hatenablog.com

 

日本は比較的単純で特定保険医療材料(特材)という機器単体で保険償還されるものと(ペースメーカーとか)、技術料といって医師の手技の一環としてサービス料のように請求できるものがある。

 

アメリカも、この日本で言う技術料に近いCPT(HCPCS Level I)もあれば、特材に近いものもある(HCPCS Level IIに多い)。

 

更にややこしいのが、クリニック・病院の種類によって異なるという点。あと保険支払者(要はメディケアなのかメディケイドなのか民間保険なのか)でも違う。

とまあこの表にまとめてみたがややこしい。

また、これ以外にも、直近でFDA承認された高価な医療機器の場合に利用できる支払いの仕組みがあるが、入院か外来かで微妙に違う。名前も違う。

①Hospital Inpatient –New Technology Add-On Payment (NTAP)
②Hospital Outpatient –Transitional Pass-Through (TPT) Payment Status

この二つの仕組みの細かい話はまた別途。

 

ということで、アメリカの医療機器の保険償還は疾患領域はさることながら、手技の性質によってもめちゃくちゃ変わります。

 

 

アメリカと日本の住宅価格をビックマックに換算して比較してみた

タイトルの通り。なぜかエクセルに残ってたので貼ってみる。おそらく日本のニュースがやたらめったらにアメリカの情報を単純に為替換算してるばかりで何じゃいって思ったからかと。こんな感じになりました。

 

 

東京23

サンフランシスコ

ロサンゼルス

ボストン

ニューヨーク

シカゴ

アトランタ

住宅購入価格(中央値)

¥70,725,500

$1,482,500

$870,000

$712,000

$725,000

$335,000

$395,000

ビックマックに換算した住宅購入価格中央値(個)

147,345

265,681

155,914

127,599

129,928

60,036

70,789

住宅購入に必要な年収目安

¥10,400,000

$404,322

$237,281

$194,188

$197,734

$91,367

$107,731

ビックマックの数に換算した年収中央値(個)

1,180

72,459

42,523

34,801

35,436

16,374

19,307

 

 

 

 

 

 

 

 

家のサイズの平均(sqft

 

1222

1544

1251

1167

1400

1700

家のサイズの平均(平方m

65.9

113.6

143.6

116.3

108.5

130.2

158.1

ビックマックに換算した平方mあたり価格(個)

2,236

2,338

1,086

1,097

1,197

461

448

 

ーサンフランシスコが高いのは言わずもがなだけれどもニューヨークが案外低いのは、郊外も含まれているからか。マンハッタンとブルックリンだけがニューヨークじゃないだろうし。ビックマック個数に直すと東京とロサンゼルスとボストンとニューヨークがいい勝負。

 

ー戸建てで見るともちろんアメリカの大都市の価格は高いが、意外にシカゴとかアトランタレベルになると東京23区といい勝負になるのはやはり都市の大きさの問題かと。

 

ー住宅購入の年収目安も、金利のせいでアメリカの方が総じて高いけれど、ビックマック個数で比べると東京とシカゴとアトランタはいい勝負。

 

ー予想通りだったのは1平米あたりの価格はビックマックの個数で調整すると実はサンフランシスコと東京が大体一緒というところ。やっぱりアメリカの家は戸建て価格は高いがその分広い!

 

ソース:

https://www.homes.co.jp/cont/buy_kodate/buy_kodate_00792/

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240112-OYT1T50156/#:~:text=%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AF

https://www.cnbc.com/2023/10/25/homebuyers-must-earn-400000-to-afford-a-home-in-these-metro-areas.html

https://www.redfin.com/news/homebuyer-income-afford-home-record-high/

https://finance.yahoo.com/news/most-big-macs-arent-expensive-113000123.html#

 

マーケットアクセスの観点からのRWE(リアルワールドエビデンス)

RWE(リアルワールドエビデンス)は一時期とても流行って、いまはハイプサイクルでいう谷、、、とまではいかないまでも以前と比べると下火になってきている気がします。特にマーケットアクセス・保険償還という観点でいうと、日本ではHTAの試行前後で特に騒がれていたという事もあるのかもしれません。

 

アメリカだとPRO(Patient Reported Outcome)をFDA承認でどう活用していくかというのが一つのキーになっているようです。ちゃんとは読めていないのですが、以下のようなガイダンスも最近出ました。

www.fda.gov

 

いわゆるマーケットアクセス部門に所属する身からすると、この辺りのアウトカムについてはR&Dやクリニカルに比べて一日の長がある、、、と思われるので将来製品のプランニング時にバリューを出せる点が増えたのだと思います。

 

一方でRWD(リアルワールドデータ)ではなくてRWE(リアルワールドエビデンス)という点でいうと、使えるデータのバラエティをいくつ抑えているかという点で、マーケットアクセス部門自体の存在感が変わっていくように思います。

 

2020年のマッキンゼーのレポートと2023年のPWCのレポートを比べても、3年間で活用事例としては大きくは変わってない印象(特にファンクションごとの活用事例の画像の話)。

www.mckinsey.com

www.pwc.com

 

マーケットアクセス部門が所有しているのって、いわゆるクレイム(保険請求)データと時たまレジストリーデータくらいでして、直にリアルワールドデータを取ろうとすると時間的な観点から個別製品というよりも治療法・Therapyレベルでの目的でないと最終的にはペイしない気がします(例えば、XXXというモダリティの薬や機器をFirst Lineにもってくるとか)。

 

保険請求データも、薬はまだしも機器となると、個別製品ごとに見れなかったりするものもあるので(特にアメリカのCPTやHCPCSは機器ごとに設定されないコードなので、日本でも技術料でカバーされるものは同じなのでは?)なかなか活用方法が限られています。

休みの間、すき間をぬって考えたのですが、だいたいこんなとこかな?

  • 疾患啓発・アドボカシー(メッセージの対象は政府や保険者。患者団体や学会とコラボして行えると吉)
    • 治療実態
    • 疾病負荷
  • 経済性の観点からの製品差別化(メッセージの対象は保険者・病院・HCP)
    • 入院イベントの減少(合併症や副作用などなど)
    • 適正使用・アドヒアランス・継続治療期間の向上
  • 保険償還上の制度
    • HTAの際の関連医療費の推定
    • Coverage with Evidence Development

必ずしもファンクションとして予算が潤沢でない中で、どこを攻めるのがスジがいいかを見極められるのが重要な資質になる気がする今日この頃。

アメリカの会社であっても、社内の根回しは重要という話

夏から年末まで将来製品のプランニングで駆け抜けていました。そしてつい2週間ほど前にマネジメントレビューがあり、見事に提案?というか示唆?がポシャってしまったという話です笑

 

題名にもありますが、ポシャってしまった理由は今更ながら分析すると次のあたり:

・リーダーシップチーム内の力学の読み不足(誰の声が大きいか、という考慮の欠如)

・力の大きいファンクションリーダーとのレビュー不足(というか根回し)

 

今の会社は比較的R&Dの力が強くてマーケの力が弱いという、典型的なプロダクトアウト型の会社であることを2年勤めてようやく把握していたのですが、それでもマーケサイドのレビューのみで上げていったところ、見事に刺されました。

 

オープンなディスカッションの中で刺しつ刺されつ、、、というのはまあもしかしたらアメリカらしいところで、密室で勝手に決まってしまうこともあるという日本的な社内政治とは多少違うのかもしれませんが、とにかくアメリカでも根回しは超大切という話。

 

まあしかし今回の問題は、チームメイトやその他マーケとも話していたのですが、そもそもその人物の聞きたくない不都合な真実を突き付けざるを得ない立ち回りの時点で、キーマンを意識して根回しをしようとしてもこんがらがってた気はしますが、、、

 

ちなみに、レポートラインや、チームリーダーのクビがとぶ頻度、組織編制とかは要注意。結構政治的・・・というか好き嫌いというか、上の方針とのあうあわないでいろいろ変化するので、そこから力学を読み取らなくてはいけないようで。

 

ということでいろいろありつつも、アメリカはついにクリスマス休暇に突入。他に燃えそうなトピックが来年早々にあるのは悩みどころだけど、いったん忘れて隣人の差し入れてくれたクッキーと、ランチのBBQに舌鼓。

 

ウェグマンズのチョコレートケーキは案外よかった。

 

ウェグマンズはNYではSakana-yaなるコーナーもあるらしく、ちょっとしたデパ地下のようなコンセプトを重視しているので割とお勧めのスーパー。NC州でも最近ポコポコ経ち始めた。現地から直接ソーシングしたり、やる気のある担当がいれば原産地に派遣して教育したり(聞いた例はチーズ)しているそうな。

www.wegmans.com

 

 

アメリカでの医療機器の保険償還ー②基本コンセプト~Coding・Coverage・Payment~

アメリカでの医療機器の保険償還はとても複雑。1つには前の記事でも紹介した通り、Payerがいくつもあることからくる複雑さもあるけれど、もう1つには償還のシステム自体が複雑なプロセスになっているという点があります。

 

この記事ではそのシステム・プロセス面を主に紹介。特に基本となるコンセプトのCoding・Coverage・Paymentが中心。

 

〇Coding・Coverage・Paymentの意味

www.theatticusgroup.net

Coding

医療機器の償還に使われる際に使用されるコードの事。入院治療・外来治療や医師が請求に使うものと施設(病院)が請求に使うものと、様々なコードがあるため、どのコードでの請求対象になるかを理解するのがとても重要。細かいコードの話は別途。

 

自社の製品にあてはまるコードがない場合、関連する学会と連携してAMA(American Medical Association)に新規コードの申請をしなくてはいけない。。。がとても時間のかかるプロセスで大変(数年以上かかる)。なのでCoding 戦略はとても重要だったりする。

 

Coverage

広義には償還対象となっているか否か、ということ。基本的には臨床エビデンスの有無に基づいて、償還をすることが"Reasonably Necessary"なのかで判断されます。

アメリカの場合、Medicareのような公的保険者とUnited Healthのような民間保険者で決定が異なることが多々ある。Medicareでは、National Coverage Determination(NCD)やLocal Coverage Determination(LCD)というよう形式でこのCoverageについて規定されてる。このNCDやLCDの細かい話は別途。

 

Payment

償還されるときの支払額。保険者ごとに異なるが、民間保険はメディケアの120-150%あたりだとか。メディケアの支払額はなんだかんだでベンチマークとなる。このPaymentはCodingに紐付くので、もし支払額に懸念がある場合は新しいCodingを申請することとなり、数年がかりのプロセスにつきすすむことになります。

 

〇なぜこの3つに分解するのか?

それぞれのプロセスが比較的独立していることが、その理由。個人的にはCodingとPaymentはより従属性が強いとは感じる。

 

日本と比べると、Coverageが一番ユニークにな。例えば日本では、適応対象は薬事承認された内容がそのまま適応対象になるので、考える必要はほとんどない、、、というかGivenなものになるが、アメリカでは各保険者がさらに独自に決めることが可能。というわけで変数が一つ多い。

 

Codingも日本だと基本的には保険戦略といえば、特定保険医療材料の話になってしまうが、アメリカだと日本でいう技術料で保険償還されるものが多く、Hospiral Economicsを考える要素がとても大きいという印象。

 

というわけで下に日本とアメリカでの保険償還の考え方の違いをハイレベルでまとめてみた。次はコーディングの細かい話をまとめる予定。

 

 

 

 

認知症薬のアメリカにおける保険適応の実際ーCMSのプレスリリースとCoverage With Evidence Development

先週についにFDAの正式承認を受けたエーザイ・バイオジェンの認知症薬。色々な記事でこの正式承認によって、広く保険適応がされるとされている。

toyokeizai.net

jp.reuters.com

 

この発表の後、たまたまCMSのホームページを別件で見ていたら、ちょうどプレスリリースが出ていた。

www.cms.gov

 

こちらでもBroaderCoverageとされているが、よく読み込むともしかしたら、普通の人がイメージする保険の適応拡大とはちょっと違う。

 

というのもプレスリリースで、「To receive Medicare coverage, people will need to: 1) be enrolled in Medicare, 2) be diagnosed with mild cognitive impairment or mild Alzheimer’s disease dementia, with documented evidence of beta-amyloid plaque on the brain, and 3) have a physician who participates in a qualifying registry with an appropriate clinical team and follow-up care. Clinicians participating in the registry will only need to complete a short, easy-to-use data submission.」と書かれていたからだ。

1番目はメディケアの対象であること、2番目は診断基準の話なので特に問題無いのだが、注意すべきは太字にした3番。薬を処方されるには医者がレジストリーに参加していないといけないと書いてある。

 

このレジストリーというのは何かというと、特定の疾患を対象にしたデータベースを作る枠組みのこと。今回の場合CMSが直接構築するらしいが、果たしてこのレジストリーに参加できる医者がどれくらい出てくるのかというのは、今回の保険適応を読み解く上での注意点だと思う。

 

このレジストリーに参加する際の仕組みがまだよくわからないので、医者からみたコストがはっきりとはわからないが、よくあるのはレジストリー専用のシステム・ソフトウェアを入れたり、それに対応するインフラ(ITという意味だけではなく、それを扱ったり、データを収集する人的なリソースも含めて)が必要になってくる。この辺りのハードルが実際医者のレジストリ参加率に影響するかはポイントになると考えられる。

 

そもそもこのCMSの発表を読むと、そもそもの保険適応で使われたCoverage  With Evidenced Development(CED)という枠組みの中に未だにあることがわかる。CEDというのはCMSが作り上げた保険適応のフレームワークの一つで、エビデンスが十分で無いが緊急性の高い病態であることから迅速に一定の保険適応を与えるために作り上げられたもので、主に希少疾患だったり限られた治療法に対して使われてきた。

 

このCEDには大きく、①RCT(ランダム化比較試験)に参加した患者のみに保険を適応する、もしくは②レジストリーに参加した患者のみに保険適応する、という2種類がある。

 

今回のCMSの発表を見ると、①から②に切り替えたものの、CEDというフレームワークから外れることはなく、CMSアルツハイマー薬がReasonable and Necessaryであるかという観点に関してデータを求めていると解釈できる(おそらく長期的なアウトカムに特に興味があるのだと思うが)。

 

このレジストリーで蓄えられたデータが解析されることでCEDがどう変化していくか、というのも今後ポイントになりそう。

 

 

 

 

 

サウスカロライナ州チャールストン

先月、子供の春休みと合わせて1週間有給をとって、その間にサウスカロライナチャールストンまで行ってきました。

 

メインはチャールストンにある水族館。どうも内陸部にいると、海の動物に会う機会が少ないので、近隣で比較的大きそうなチャールストンまで遠出を決定。しかし運悪く外せないミーティングが入ってしまい、自分はホテルに残り妻と息子たちだけで水族館に、、、

 

チャールストン独立戦争時代からある古い都市ということで街並みも何となくヨーロッパの雰囲気。

 

古めかしい税関の建物。こちらもヨーロッパ風。

 

街中にひっそりと存在するシティマーケット。色々なアクセサリーに加えて、お茶とかバーベキューソースとかいろんな種類の商品が売られてました。個人の店が多いのでバザー的な雰囲気。

 

事前に同僚に聞いておススメしてもらっていたフローズンロゼを飲みながらビーチで一休み。ビーチ沿いにはプライベートビーチやプライベートハーバーのある家があって後でZillowで調べたら、うん億円の家がいくつもありました。恐ろしや。

 

帰りはテキサス発祥の有名な巨大ガススタンドチェーンのBuc-ee'sに立ち寄り。写真じゃわからないけど、この2倍以上のスタンドの規模。


ブリスケットサンドイッチがとても美味しかった。

 

アメリカ人に人気の旅行先ということで、確かにオシャレな街。ただ子連れで楽しいかというと、ビーチと水族館くらいかも?