アメリカの医療制度

何か月ぶりだろうか、、、また思い出したように書いてみる。

 

アメリカの医療制度は複雑怪奇。その原因の一つはPayer(支払者)が公的・民間と入り乱れて存在するあたりかと。主に次の4つのタイプがあります。

 

1. Socialized

基本的に無料の医療サービスを受けられる医療制度。イギリスのNHSとかその一例。自分がイギリスに留学していた時は何も保険料を支払わずに医療サービスを受けていました(最近は変わったようで、留学生は一定額を支払わないといけないようです)。

 

アメリカにも似た仕組みはあります。VA hospitalsというものでVA=Veterans Affairs、いわゆる軍人(退役含む)向けの病院です。全国に存在し、基本的に軍務に由来する医療サービスは無料になるようです。

侮るなかれ、サイズはかなり大きく、2015年は約30万人の従業員と65億ドルの予算をもっている(ウィキペディアソース)。

https://en.wikipedia.org/wiki/Veterans_Health_Administration

 

2. Public Payer

いわゆる公的医療保険。例えばカナダは1つの公的医療保険システム(保険者)で全国民をカバーしているようです。

 

アメリカではメディケア・メディケイドというやつです。メディケアは主に老人向け、メディケイドは貧困層向けです。オバマケアとか今年の選挙で争点となっているのもいわゆるこれ。このサービスを全国民に拡大するかどうかが争点になっている。

メディケアも中は細かく分かれているけどまた別で。

 

3. ビスマルク型(民間医療保険、、、ただし政府の規制下)

日本とかドイツとかがまさにこれ。民間の保険者がいて国の代行的に保険を提供するが、基本的に全国民をカバーしている。日本も民間で働いていると各会社の健康保険組合に入りますよね。公務員は共済組合、自営業の人とかは国保

 

アメリカもまともな会社で働いていると、各会社に健康保険組合があってそこが購入している民間保険にはいります。決定的に違うのは、日本だったらどの組合に所属していようが、同じ薬や手術は同じ負担額(公的薬価・診療報酬の3割)になりますが、アメリカは組合を通じてどの保険に加入するかでまったく異なってくるところ。

 

4. 無保険者

アメリカにはずっと存在している無保険者。だいたい今は15%弱。

https://news.gallup.com/poll/246134/uninsured-rate-rises-four-year-high.aspx

日本では無保険者はいない、、、と思われがちだが、保険料滞納すると実質無保険になるので、一定数いる。アメリカよりは全然低いだろうけども。

 

アメリカの病院はいろいろいわれつつも、実質マージンは4%程度らしく、民間医療保険の加入者で稼ぎつつ、メディケア・メディケイド・無保険者での赤字をカバーしているようです(下のLEKのレポートの分析参照)。

https://www.lek.com/insights/ei/will-acos-keep-hospitals-and-insurers-out-critical-care

 

もっともアメリカの医療費が高いのは、もちろん無保険者の分の医療費が跳ね返ってきているというのもありつつ、公的薬価とか診療報酬のような規制の有無が大きい気がする。

 

あといつも思うのは人件費。高い、高すぎる。その辺の田舎(日本の地方の県庁所在地レベル)のスーパーの従業員の時給が15ドルくらいするというのはなんとも不思議。そして生産性はもちろん悪い(暇そうな店員を多数見る)。アメリカ人は気が付いていないけど人件費とか地代とかが安くなると(医療に限らず)諸々の値段が安くなるのではないかと思う今日この頃。この辺りはもうちょっと調べてみようと思ったり。