MBAの授業プレイバック:ファイナンス

今年コーポレートファイナンスのTAをやることになったので、復習がてら去年の授業内容を簡単にまとめてみました(間違ってたら指摘してください笑)。

第1弾は必修のファイナンス、その後に余裕があったら、選択科目のコーポレートファイナンスを。ほかの科目も余裕があれば。

 

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〇構成

1、現在価値

1-A:Perpetuity model/Growing Perpetuity model:

1-B:Annuity model/Growing annuity model

1-C:Effective Annual Rate

定期的に一定のクーポン(利息)を得られる債券があったときに、割引率r、成長率gとしたときの債券の現在価値を求めるモデル。利息の支払い期間が無限だとPerpetuity model、有限だとAnnuity modelになる。

 

2、プロジェクト評価

2-A:FCF(フリーキャッシュフロー

会計でもおなじみFCFについて。Unlevered Net Income(EBIT×(1-税率))に減価償却を戻してCapExとNet Working Capital(運転資本の増減)を差し引いたもの。

減価償却×税率分のTax Shieldが生まれる。

2-B:IRR

おなじみ、一定の期間TにおいてNPVが0となる割引率のこと。IRRが資本コストより大きければよい。が、IRRだけみると、絶対数としての収益の大きさが見えなかったり、期間の途中で追加投資をするシナリオだと解が見つからなくなったりという問題もある。

2-C:Cost of Capital

Debt costとEquity Costの比率で決まってくる。Debt costは社債格付けから比較的簡単に特定できるが、Equity Costはちょっと難しい。そこで後述のCAPMが使う事になる。

 

3、株式・債券の評価

3-A:Constant Dividend Growth Model

基本的にはPerpetuity ModelもしくはAnnuity Modelの展開。特にシンプルだった成長率に対して、Payout ratio(リターンのうちどの割合を株主に還元するか、再投資率(plowback ratio)bを用いて1-bで表す)を導入したもの。

3-B:Terminal Value

ターミナルバリューはどちらかというと2にも関係する概念で、一定期間後はPro Forma上で、仮定をおいて一定の成長率の下、事業が成長するとして、Perpetuity Modelを利用して現在価値を求める方法。

3-C:リスクプレミアム・マーケットプレミアム

Cost of Capitalは、r = riskfree rate + risk premiumとして定義される。Risk free rateは国債を使うのが一般的。もう一方のrisk premiumの推定に使うのがCAPM理論。

Risk premiumをβ(Rm - Rf)として、マーケット全体のリスクからリスクフリーレートの差に対し、個別の金融資産特有のリスクを表す値=βを用いて、説明している。

この理論があると、CAPM回帰モデルを用いて、マーケットのデータからこのβ値を推定することができるようになる。このCAPM社債にももちろん適用できるが、少し応用が必要のよう。

3-D:Spot rateとYield Curve

スポットレートとは、ゼロクーポンボンドにおける割引率のこと。債券には1年物、2年物、3年物、、、、、、、と異なる償還期間Tごとに割引率が存在するので、スポットレートもそれだけ存在する(例えば1~50年の債券があるならば、50個のスポットレートがある)。国債のスポットレート=リスクフリーレートともいえる。

このスポットレートを図示したものがイールドカーブ。不吉の予兆とされる「逆イールド」はこの図から見て取れること。短期金利長期金利より上昇する現象=世の中の人からみると数年後の経済状況があまりにも悪く、長期債を買うほうが短期債を買うよりマシ、、、と思っている状態。2019年の下半期にこの現象が起き、MBA生は戦々恐々としたものですが、ふたを開けてみるとコロナウィルスという別現象による景気悪化がおこるという、なんとも微妙なオチがつきました。

 

5、リスクポートフォリオ

5-A:CovarianceとCorrelation

統計用語で、共分散と相関になる。統計でも比較的最初の方に出てくる。特に回帰分析前後あたりで。

なぜこの2つの用語がファイナンスに関係してくるかというと、ポートフォリオを論じるときに必要になるから。

 

異なる金融資産AとBについて比率をXa、Xb、リスクをRa、Rbとしたとき、

期待リターンはXa・Ra+Xb・Rbとシンプル。

一方リスク(=分散)はXa^2・σ(a)^2+Xb^2・σ(b)^2+2・Xa・Xb・σ(ab)となり、最後の2・Xa・Xb・σ(ab)がいわゆる共分散となる。

この共分散は相関係数で置き換えることが可能で、

σ(ab)=σ(a)・σ(b)・ ρ (ab)となりこのρ (ab)がAとBの相関係数にあたる。

 

この式が結局意味するところは資産Aと資産Bがマーケットの動きに対して、

①同じ動きを見せる場合→ポートフォリオとしてのリスクは相対的に大きくなり

①異なる動きを見せる場合→ポートフォリオとしてのリスクは相対的に小さくなる

ということ。

 

短期的にはアービトラージを狙うという戦略がよくあるが、長期的に見た場合は多様な金融資産を含むことでリスクをうまく分散しているポートフォリオに投資するのが好ましいという理由の裏付けになっている。インデックス投資とかまさにこれ。

 

5-B:Capital Market LineとCAPM

リターンとリスクが最も理想的(Diversifiedされている)となっているポートフォリオMを考えると、すべての投資家はポートフォリオMとリスクフリーアセットを組み合わせると考えられる(組み合わせの割合は投資家ごとのリスク選好の違いのみ)。

 

さて、投資の効率性はリスクプレミアムとリスクの比率で表せると考えられシャープレシオと呼ばれるが、最大のシャープレシオは、上記のポートフォリオMとリスクフリーレシオの組み合わせたものであり、(Rm - Rf)/σ(m)であり、この組み合わせを図示したものがCapital Market Lineとなる。この際にリスクとリターンの関係が次の式で表せる。

Rp = Rf + (Rm - Rf)/σ(m)×σ(p)

 

さて、ここである単独の株式Aを上記の式にあてはめようと考えると、

Ra = Rf + (Ra - Rf)/σ(m)×ρ (am)×σ(a)=Rf + (ρ (am)×σ(a))/σ(m)×(Ra - Rf)

となり、ここで

Ra = Rf + β(Ra - Rf)、β=ρ (am)×σ(a)/σ(m)というCAPM方程式が成立する。

慣習的に、ポートフォリオMは代表的な市場のインデックスが用いられる(S&P500 Indexとか)ことが多い(が、もしかしたら、このMをどこから取ってくるかは実務上の論点になるのかも?)。

つまり、この式が意味するところは、リスクフリーレートと株式投資の期待利回りと該当する会社の株価のボラティリティによってエクイティコストが決まるということ。

 

5-C:CAPMの分析

CAPMを変形すると、

Ra - Rf = β(Ra - Rf) となり、過去のデータを用いた回帰式をあてはめると、

Ra - Rf = α+β(Ra - Rf)+誤差項という式になる。

理論的にはαは0のはずだが、もしα≠0だとすると、必ずリスクプレミアムに一定の影響を与える会社固有の要因があることになる。

誤差項は会社特有のリスク要因による個別の影響だと考えられる(不正が起こったとか、新商品の開発に成功したとか)

このβとリターンの関係を各個別の会社ごとに分析した場合、Security Market Lineという線が引ける。

 

ある特定のプロジェクトのコストを求める場合、比較可能な会社・業界のエクイティβ、デットβ(レーティングに基づくことが多い)、資本構成をもとに、アセットβを求め、CAPMをあてはめることで割引率を求める。

 

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と、こんなことをやってました。

ケースも数量分析が多くて、チームにも貢献できたし、未経験の分野だったけど、楽しかった思い出です。