製薬業界と医療機器業界を比較してみて

さてさてついに来週からインターンシップという事でガクブルしています笑

初めての医療機器業界+あまりやってこなかったテーマ(=アップストリームマーケティング)ということが理由です。

 

最近はBeyond the pillってバズワードもあるように垣根が崩れてきている動きがあるので、余計に製薬も医療機器も似たようなもんでしょって思ってました。まあたぶん非ヘルスケア業界から見たときは、正しい感想なんだと思います。顧客はやっぱり医療従事者と患者さんだし、Regulation面でも似たような法令(薬機法とかGXPとか)で似たようなお役所(FDA・PMDAとか)に縛られているし。

 

ただ解像度を上げていくと少し違う絵も見えてきたので、少しメモ。

 

===主な違い===

〇その1:収益率

・マージンは薬の方が高め。今までの高薬価のおかげか。ただ面白いことにBiotechをみるとあんまり変わらない。

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Source: NYU http://people.stern.nyu.edu/adamodar/New_Home_Page/datafile/margin.html

関係ないけどこのデータ、R&D費用の割合がバイオテックはバグってる気もするけどいいんですかね?一部製造原価にも含まれるとか??一応NYUのデータだから間違いじゃないとは思うんだけど、、、

・収益率ではないけど、Cost of Capitalの差をみるとリスクは薬の方が高い。ベータの値も医療機器はほぼ1なのに製薬は1.5。Cost of EquityやCost of Debtも同様。まあ下でいうライフサイクルの長さが一つの理由か。開発期間が長いとそれだけボラティリティが高くなるのはまあしょうがないところ。

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Source: NYU http://people.stern.nyu.edu/adamodar/New_Home_Page/datafile/wacc.htm

 

→So what?

・ということは必然的に製薬企業の方が新規事業開発をするときのROIは高めになってくるわけです(最低限Cost of Capitalよりは高くないといけない+新薬候補の開発プロジェクトのROIより高くないといけない)。ここで出てくる疑問は、なのに一般的にマージンが低くなる医療機器に投資するのってアリなの?っていう点

・そんなのありえないっしょ!って考えて、それでも医療機器に投資する理由があるとしたら既存の製品へのシナジー効果が認められて、それもリターンに含めた場合の合わせ技一本でROIが高くなるというロジックなのかなと。

・もしくは新薬候補がオワコンで、偶然見つけた医療機器がCost of Capitalよりは高いROIだから、しゃーないこれやろ!っていうロジックかもしれません(そんなの言えないけど)

 

〇その2:治療目的

・薬の主目的は「治癒」であるが、医療機器は「QOL改善」が目的(※ここで治癒とは疾患・もしくはその原因の消失を指すと定義)。

・診断機器はもちろんのこと、治療機器にしても、例えばペースメーカーやインスリンポンプ自体は心筋梗塞や糖尿病を「治癒」しない。「発症」したあとにその病気とうまく付き合うのを補助している。

・考えてみると当然で、薬は生物学的、医療機器は工学的な仕組みをもつので、生物学的な経路でないと「治癒」にはいたれないのが一般的。

 

→So what? 

・当たり前の話であるが、薬と医療機器はビジネスとして直接的にかち合わないということ。お互いを補完しあうような棲み分けが自然とされている。だからシナジー効果があるんだよ、というロジックが出てくるのかも

 

企業として、特定の疾患領域で予防・診断・治療・リハビリそれぞれを揃えることでシナジーが生まれるんじゃないかという考えが、

 

〇その3:ライフサイクル

・医療機器のライフサイクルは圧倒的に短い。2~5年というところか。常にアップデートが繰り返されるし、レギュレーションもそれを反映して、薬ほどRigorousなデータが求められない。薬だとI~IV相と段階を経るが、医療機器では稀。また非侵襲性の高いものも多いので、FDAの510kや薬事法でいう一般医療機器や管理医療機器の枠組みに入ると、承認コストが大分下がる

 

→So what?

・薬よりマーケティングに求められる役割・重要度が大きいと考えられる。顧客(医師・患者)のFBを意識しながら新しい商品を常にローンチしていく必要がある。またそれは競合も一緒であるので、よりマーケッターとしての腕が試される・・・はず

 

〇その4:病院へのPLの撥ね方

・薬は薬価があるし現状は償還価格(Reimbursement)よりも低い価格で仕入れさえすれば基本的には問題ない(もちろん需給管理は重要だろうけど、まあ他の業界より予測しやすいのでは、、、)。

・医療機器は少しややこしく、日本の場合、技術料に含まれるものとそうでないものがあるのでそれによって意味合いが異なる。前者の場合、他の人件費とかとひとくくりになって償還されるので、価格競争の様相を呈する・・・はず。

・あと薬みたいに必ずしも消耗品ではない機器も多いので、BtoB的な経済性の意識は昔から強そう。ステークホルダーも医者だけじゃなくて、技師だったり、看護師だったり、事務方だったり、いろいろと調整が必要そう。その分差別化も戦略的にやる必要があるのかも。

(参考)

japanhpn.org

 

→So what?

コモディティ(メスとか)の場合は価格競争化しそう。スペシャリティ製品の場合は、薬同様にValue based medicineの影響で、経済性を示すことが重要になってくるが、それだけではなくてサポートサービスだとかファイナンスのお手伝いとか、広範囲にわたったソリューション提供をする必要があるのかも。イメージとしてはトヨタのディーラーみたいな。MRIとか高い機器になればなるほど、そういった面が強くなりそう(もはや産業機械といっしょで)。

 

〇その5:使われ方

・薬は単に投与するだけだが(誤診さえされなければ)、医療機器は使う人の腕が試される(機器のクオリティだけじゃなくて)。どんないい機器でもヤブ医者に使われたら何の意味もない。

 

→So what?

ユーザビリティだったり、医者へのトレーニングケアだったり、製品の差別化がより多様になりそう。

・営業としてもより現場に入り込んでニーズを拾うことが重要になりそう。MRだと古いけどSOVみたいに単に情報バラまき屋、、、みたいなイメージもあるが、医療機器はよりソリューション営業的な立ち位置になるのかと。そのぶん遣り甲斐があると感じる人もいるだろうし、e-MRみたいな代替品の脅威は比較的少ないのでは。

 

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とここまで書いて疲れてきたのでいったん終了。

So whatが深さ不足な気がするので、後でまたアップデートするかも。。。

インターン中盤とかかな。。。