医療の世界では最近「価値」という言葉が聞かれると思う。代表的なのが「Value based medicine」あるいは「Value based healthcare」いう言葉で表される価値に基づく医療という言葉だ。
ここでいう医療とは、薬や医療機器だけでなく、診療行為・治療行為も当然含まれる。そもそもなぜこんな話題が出てくるのかというと、数年~10数年くらい前まで(一部今でも)医療の支払いというのは従量課金制(Pay for service=P4S)だった。いわゆるPrincipal Agent problemによってSupplier induced demandが起きやすい状況にあった(簡単に言うと医師が患者の便益よりも自己の便益を優先して無駄な薬の処方・治療行為を行う状態)。
経済が上向いているときはよかったものの、経済成長の停滞+非生産年齢人口の増加=医療費・社会保障費の急増で、そんな非効率はダメっていう時代になっている。そこで提唱されていたのが「価値に基づく医療」である。
ここでは薬をメインに取り上げる。
①日本での例:HTA(Health Technology Assessment)=医療技術評価制度の導入
一時期話題になったオプジーボ等の高額医薬品が値下げとなった一因でもある(メインは特例市場拡大再算定の適用ではあるが)。
もともとは英国を中心とした欧州やオーストラリア・タイ・韓国などアジア・オセアニアの一部の国で導入されていた。
細かい違いはあるもののの、HTAではICER(Incremental Cost Effectiveness Ratio)を算出し、閾値を超えていると承認しない(英国)もしくは価格調整をする(日本)、というように利用されている。
細かいICERの説明は別にするが、簡単に言うと新薬と対象疾患におけるベストな既存薬を比較した際の、①効果の差と②コストの差を算出して②を①で割り算したものである(一般的にはCost Utility Analysisが使われるので効果というよりも便益のほうが正しいかもしれないが割愛)。
このICERは大体どの国も500万~600万程度(英国は3万£、米国は5万ドル)を閾値の目安にしている。もちろんこれだけではなくて、英国のNICEはMCDA(Multi Criteria Decision Analysis)というフレームワークを使っている(たはず)。
②アメリカの例
アメリカは民間保険者が多いということもあり、どのように薬の価値を考えているかはそれぞれの保険者の判断次第のところもあるが、上記のHTAの概念は使われている。
例えばICER(Institute of Clinical and Economic Research)という機関があり(ややこしい。。。)、上記のような費用対効果を実施している。
Value based contractというのも流行ってきている。
上記の記事にも開設されているが、特にOutcome based contractといって、薬を使ってから数か月後の患者の効果を見て、それによって保険者(もしくは中間にいるPBM)にリベートが支払われるもの。
この記事ではAmgenのエンブレルの例が載っている。
(追記)
McKのうまくまとめてある記事を見つけたのでURL貼り付け。
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①の例にせよ②の例にせよ、新しいスキームを組むという事はそれだけ余計に人件費やらアドミンコストがかかるので、それも含めていかに安く・早く・正確に評価できるかというのが鍵。ここでRWEやウェアラブルデバイスやらが特に使われやすい(きている)のではないかと思う。