CMSのアデュヘルムに対する償還決定内容の意味するところ

4月の頭、CMSがアデュヘルムに対する償還の方針(正しく言うとNational Coverage Determination=全米レベルで償還対象とするか否かの決定)を決めました。

www.cms.gov

 

アデュヘルムというのはバイオジェン・エーザイが開発したかのアルツハイマー薬です。FDAの薬事審査がヒートアップしたのもいまや去年。

whatishealth.hatenablog.com

 

CMSの決定内容はアデュヘルムにとって重要です・・・というのもアルツハイマーを発症するのは主に65歳以上、そしてCMSの管轄するメディケアはまさに65歳以上向けの公的保険です。

 

決定内容は臨床試験を用いたCoverage with Evidence Development(CED)です。このCEDというのは、対象となる介入方法(薬剤・機器等)のアウトカムについて、追加で試験を実施・エビデンスを構築し、その結果によってカバレッジの内容を見直すという指針になります。

 

試験の方法も、①厳格な前向きの臨床試験と②メディケアの保険請求データベースを用いた後ろ向きの解析、の2種類があり、前者では臨床試験の参加者のみに保険償還を認めることになります。

 

つまりこの決定は、CMSとしてはFDA申請で使われたエビデンスでは償還のゴーサインは出せない、追加のエビデンスをつくれ!という内容でして、実質的にFDAの審査自体に対してNoを突き付けたことになりました。

 

さらに言えばアデュヘルムはFDAのAccelerated approval pathway(FDAサロゲートエンドポイントでのアウトカムを申請上認めるというプロセス)を経ていました。これはFDAがアンメットニーズの高い新薬・技術を促進するために作られたもので、2012年にはBreakthrough Therapy Designation (BTD)という新しいプログラムも作られていました。しかし今回のCMSの決定は、そういったFDAの特例的な審査基準に対して、CMSとしての償還決定基準とマッチしないということを意味しており、FDAの特例審査プログラムの意義を低下させる結果となったとも一部では考えられているようです。

 

日本だと薬事申請を通ればほぼ実質的に保険償還対象とはなりますが(価格はいったん置いておいて)、アメリカではそもそも償還対象にならない可能性もあり、FDAだけを見ていると手痛い失敗をするというケーススタディになっているようです。