アメリカでの医療機器の保険償還ー①日本vsアメリカのハイレベル比較

日々の仕事の中で気が付いたことのメモです。

日本とアメリカの比較という観点からつらつらと書いていきたいと思います。

 

①保険者の数:Single Payer(日本) VS Multiple Payer(アメリカ)

まずは言わずもがなのPayerの数。アメリカは民間保険・公的保険あわせて900以上の会社・団体・組織が存在します。

collectivemedical.com

 

特に民間保険は個別にポリシー(どの医療サービス・機器を償還対象とするか)を設定するので、個別に保険償還のレベルが異なります(償還対象か否か、対象でも償還率はいくらか)。

 

アメリカの医療費が高いのは有名な話ですが、その一因となっているのがこの保険の複雑さです。ある保険では償還対象となっている医療機器Aが別の保険では償還対象となってないということはザラにあります。その上、同じ保険会社でも、保険プランによってCopaymentやCoinsuranceと呼ばれる自己負担金額(日本なら普通の大人は3割で一定)が大きく変わり、患者自己負担額が異なります。

 

②償還の単位:Therapy level reimbursement(アメリカはほとんどこちら) VS Device-level reimbursement(日本はデバイス単体=特材での償還もアメリカに比べると多め)

また償還の単位が、アメリカはほとんどがTherapy level(特定の治療に保険償還の単位が設定される)で行われ、機器単体での保険償還は少ないです。いわゆる日本でいう「技術料」で規定される機器がほとんどで、日本の特定保険材料(=特材)にあたるようなデバイス単体での償還はDurable Medical Equipment(通称DME)と呼ばれるような一部の機器のみでメインストリームではありません。

 

このアメリカでのTherapy levelでの保険償還単位となるのがCodingとよばれるコードで、外来治療・入院治療×病院種類などによって複雑化しています(別記事で紹介予定)。とにかくこのCodingが複雑すぎるため、病院で正しく保険償還のオペレーションを回してもらうための情報提供が必須となってきます(かつ理想的には、そのコードを使うと病院側のProfitもよくなるような経済性エビデンス提供)。

 

③保険償還対応組織の大きさ

以上のような複雑な環境にあるため、日本とアメリカのマーケットアクセス・保険償還チームの数を比べると、日本は会社全体で多くて10-20人ですが、アメリカだと事業部の数×5-10名=約50-100名になります(ざっくり)。

 

Field Reimbursementチームと呼ばれる医療機関・保険会社向けの交渉・コミュニケーション(経済性エビデンス等)を担当するフィールドチームがいるのが大きな違いです。そして彼らを支援するPayer MarketingやOperation Excellence・Reimbursement/Payer Strategy・HEORなどが加わってくるため、必然的に大きくなっていきます。

 

またメディケアやメディケイド等のポリシーは法律によって規定されており、議会での決定が彼らを束ねるCMSの方針を大きく左右するため、ガバメントアフェアーズとよばれる政府渉外対策機能も持つことが多いです。日本だとロビー活動による影響がアメリカほど大きくはないので、この機能はあまり持たないorあってもごく少人数or兼務というのが実情かと思います。

 

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新しいことに気が付き次第、随時アップデート予定。